『機動戦士ガンダム』第1話

 『機動戦士ガンダム』の第1話を見返してみた。やはり、『ガンダム』は、何度見ても味わい深い作品だと思う。


 『ガンダム』のリアルさということがよく語られるが、今回、第1話目を見返してみて、そうしたリアルさというものは、登場人物の心理描写によって生み出されているところがかなりあるのではないか、と思った。例えば、ジーンというジオン軍パイロットの描写などは、非常に優れていると言わざるをえない。彼は、間違いなく、アムロの引き立て役なわけだが、それは、旧来のヒーローもののように、彼が悪人として登場しているからアムロが引き立てられるというわけではなく、むしろ、彼が普通の人間として登場しているからだと言えるだろう。


 『ガンダム』の重要なテーマのひとつとして、力の問題があることは間違いない。アムロガンダムに飛び乗ったのは、「自分には力がある(自分はガンダムを操縦できる)」ということを思ったからに違いない。ジオンの新兵であるジーンは、上官の命令を無視して、独断先行してしまったわけだが、アムロもまた独断先行したと言える。


 ジーンが大胆な行動に出ることができたのは、自分の相手が無人モビルスーツであるということを知っていたからである。だからこそ、彼は、ガンダムに人が乗っているということを知ったときに非常に怯えるのである。「怯えてやがる」というジーンの有名な台詞は、ジーン自身にこそ相応しいと言えるだろう。


 さらに、ジーンは「モビルスーツ」が怯えていると言っているが、当たり前のことだが、怯えているのはそのモビルスーツに乗っているパイロット(アムロ)のほうだろう。こうした点で、ジーンにとっては、モビルスーツの先にいる人間がまったく見えていないと言える。見えていないからこそ逆に、ガンダムが化け物じみたものに見えてくるのだろうと思われる。


 いずれにせよ、こんなふうに、登場人物の心理描写が非常に細かいところが『ガンダム』のリアルな点だと言えるだろう。兵器としてのロボットのリアルさというのは、まさに、そこに人が乗っていることを感じさせるということから生み出されるのではないだろうか?