アニメ『ゴーストハント』における会話の役割と登場人物の空間配置

 アニメ『ゴーストハント』において、作品の方向性を決定づけているものとは、登場人物同士の会話であると言えるだろう。このミステリー作品において、そこでの謎の探求の仕方は、いわゆる「アームチェア・ディテクティブ」の方法を取っていると言える。問題となっているのは、奇怪な事件の起こる場所であり、登場人物たちは、その一定の空間から外に出ることはほとんどない。


 物語の展開は、会話によって推し進められる。こうしたことはミステリー作品の定石と言えるだろうが、それがアニメ作品においてどのように表現されているのか、ということがひとつの問題であることだろう。


 複数の人間の間での会話において重要なことは、空間における配置であると言える。誰がどの場所にいて何を喋るかということに、この『ゴーストハント』という作品は、非常に気を使っているように見える。二人の登場人物が向かい合って話し合うという構図を、この作品は、極力避けているように思えるのだ。登場人物が対面することがあっても、それは、真正面に向かい合うことよりも、斜めの方向に向かい合うことのほうがずっと多いように思える。


 特に重要なことを喋る人物が位置する場所とは、画面の中心点、つまり、手前の空間ではなく、奥の空間である。手前で話している人間の会話に介入してくる人物が、奥のほうから、話をするのである。


 カットからカットへと会話がリレーされていき、そこにひとつの休止符のようなものとしてアクセントが入るのが、曜日をタイプするキーボードの音である。こんなふうに会話の流れに沿うような形で、登場人物たちが空間の中に配置され、画面の中で多様な構図を作り出していくことになる。


 『ゴーストハント』は、アニメーションとしては、非常に端正な作りのアニメだと言える。それは、つまり、動画の方面に力を入れるのではなく、多量のカットの作画でアニメーションを構成していく作品である、ということである。作品の内容から考えるのであれば、これは当然の選択であるだろうし、登場人物のひとりひとりが明確に特徴づけられているという点で、成功した試みだと言えるだろう。誰がどの場所から何を話すのかということが明確でないと、この手の作品の込み入ったストーリーを把握することは難しくなることだろう。ここに、アニメーションにおける空間と時間との複雑な関係の一端が見出せるように思える。