2009年秋の新作アニメ感想(その2)――『生徒会の一存』と『とある科学の超電磁砲』

 『生徒会の一存』。
 まず思ったのは、よくこんな作品をアニメ化しようと思ったなあ、ということだ。生徒会室の中でただただお喋りしているだけの作品。第1話では、「ドラマCDで十分」とか「メディアの違いを理解せよ」といった自嘲気味な自己言及ネタがあったが、まさにその通りで、この作品は、アニメ化ということそれ自体がテーマとなっているのかも知れない。
 しかし、他方で、似たような挑戦を行なった『化物語』というアニメ作品が前クールに存在していたわけで、そういう意味では、この『生徒会の一存』という作品は、さらに大きな困難を背負い込んでしまった、という気がする。第1話では京都アニメーションに関わるネタが多かったように思えるが、この作品がむしろ意識すべきなのはシャフトの作品のほうではないかと思った。つまり、シャフトのアニメは、たとえネット上で「紙芝居」というふうに揶揄されているとしても、かなり魅力的な画面を作れていると思うので、果たして『生徒会の一存』もそのレベルに匹敵するぐらいのことができるのか、ということが問われているように思えるのである。
  監督の佐藤卓哉と言えば、『苺ましまろ』の監督であるが、『苺ましまろ』は、ある種、会話の間が重要なアニメだったと言える。それと比べると、『生徒会の一存』は、最初から最後までハイテンションを維持していて、このテンションに視聴者が付いていっているのかどうか、ちょっと疑問なところがあった(僕はやや冷めて見ていたわけだが)。
 『化物語』と同様、『生徒会の一存』も、ある種、舞台劇的な作品だと言えるが、この独特なノリに視聴者をどのように巻き込んでいくのかというそこでの工夫が毎回の見所となるのだろう(第1話はアニメネタや自己言及ネタがそうした導入になったのだろうが)。
 いずれにしても、アニメ化をするとはどういうことなのかという問題が前面化している作品だとは言えると思うので、そういう意味では、注目に値する作品であるだろう。ひとつの実験作品という認識でチェックしておきたい。


 『とある科学の超電磁砲』。
 『とある魔術の禁書目録』がなかなか良かったのと、『とらドラ』の監督だった長井龍雪がこの作品を監督しているということで期待していたのだが、ちょっと微妙な感じである。第1話を見た限りだと、当たり前と言えば当たり前だが、『とらドラ』からの文脈よりも『禁書目録』からの文脈のほうが勝っている。
 『禁書目録』にもそういう印象を抱いたが、『超電磁砲』は硬質な作品である。つまり、他方に『ポニョ』が目指したような、世界全体が生命を持っているようなアニメ作品があるとすれば、『超電磁砲』が描いているのは、生命のない人工的な世界である。
 僕は、『とらドラ』については、どちらかと言えば、柔らかい作品だと思っていて、この柔らかいところが『とらドラ』のいいところだと思っていた。そういう要素が『超電磁砲』に見出されなかったのがちょっと残念だった。
 硬い/柔らかいというところをもっと言えば、『超電磁砲』で描かれているのは、世界から浮き上がった場所で起こっている出来事という印象を与える。そもそもの作品設定がそういうものなわけだが、学園都市という人工的に作られた街は、ある種の閉塞感や息苦しさを与えるのであって、この空気の悪さがいったいどこに向かうのかということが、この作品の大きな注目点ではないかという気すらする。
 『禁書目録』においては、辛うじて外部との関係が描かれていたと言えるし、魔術と科学との対立などということも描かれていた。そうした対立軸なり何なりが『超電磁砲』では描かれるのかというところも問題であるが、僕が言いたいのは、もっと柔らかい要素がこの作品の中に入っていてもいいんじゃないか、ということだ。
 例えば、『禁書目録』においては、インデックスというキャラがひとつの出口になっていたところがあったような気がする。つまり、閉塞感の漂う世界で、インデックスが緊張の緩和する場面をいくつか作っていた、ということである(『禁書目録』第1話でインデックスが当麻の手ごとパンを食べるシーンはやはり見事だった)。『超電磁砲』においてもギャグシーンのようなものは存在するわけだが、そこでのキャラの表情とかをもっと崩してもいいんじゃないか、と思った(第1話だと、美琴が黒子の頬を引っ張る場面があったが、そこで頬がもっと餅みたいに伸びてもいいんじゃないかと思った)。
 もしかしたら、この作品の魅力は、僕の要望とは逆で、ある種の硬質さ、クールさ、人工性といったものに徹することにあるのかも知れない。そういうことを多くの視聴者が望んでいるのかも知れない。しかし、そういう硬質なアニメはいったいどこに向かっていくのだろうか。そういうところに注目して、このアニメをこれから見ていきたい。