『ゼロの使い魔』のOPで、なぜルイズは怒っているのか?

 『ゼロの使い魔』のオープニングを見ていて、いつも疑問に思うことがある。それは、OPの冒頭で、ルイズが才人に対して怒っている理由がよく分からない、というものだ。OPの最後のほうでもルイズは才人に対して怒っているが、そこでの怒りの理由は明白である。才人が他の女の子(キルケとシエスタ)と仲良くしているのが気に食わない、というものだ。嫉妬の感情が怒りに変わる、というこの移行は非常に理解しやすい。しかし、冒頭部分でのルイズの怒りには明確な理由が存在しないように思える。


 冒頭でのルイズの怒りはこんなふうに描写される。朝、ベッドの上で目覚めたルイズは、少ししてから、突然怒り出す。そして、横で寝ている才人の前に立って、乗馬鞭で叩こうとする。才人が何かをやらかして、それに対してルイズが怒るというシーンは、本編で何度も出てくるので、その限りでは、「いつものパターン」ということであまり気にせずに見ていられるのだが、しかし、なぜ怒っているのかという理由は判明としない。それによく見ると、ルイズに追いかけられている才人の頭の上に「?」のマークが描かれている。つまり、才人自身にとっても、ルイズがなぜ怒っているのか、理解できないのである。


 おそらく、考えられる唯一の解答は、次のようなものだろう。注目すべきは、ルイズが怒り出す前のシーン、つまり、湖に浮かぶボートの上で、ルイズと才人と思われる二人の人物がキスをしているシーンである。このシーンから、一瞬にして、ルイズの寝ているシーンに切り替わるので(カーテンと思われるピンク色のものがワイプとして間に入る)、おそらく、この湖のシーンは、ルイズの見た夢のシーンかと思われる。つまり、ルイズは、自分自身が見た夢に恥ずかしがり、そんなふうに自分が才人とキスをしたいという欲望を持っていることを認めたくないばかりに、その恥ずかしさが怒りと結びつき、結果、その怒りが才人に向けられた、と考えられるわけである。まとめると、ルイズの怒りの原因は彼女の見た夢にあるのであり、それゆえ、才人は、ルイズが怒っている理由が分からないのである。


 もし上のようなことを意図してオープニングの最初のほうを作っているとしたら、それは、非常に分かりにくいと言わざるをえない。というのは、湖のシーンがルイズの夢であることを示すものがほとんど何もないからである。この二つのシーンはまったく繋がりのないシーンのようにも見える。繋がりがないにも関わらず、なぜ二つのシーンが並んでいると考えられるのかと言えば、それは、映像がオープニングの歌詞に沿って作られているからである。歌詞はまず、「ファーストキスから始まる」というふうに始まるのだが、映像においてもキスシーンが描かれているために、映像は歌詞を支えるようなものとして機能していると考えられるのである(鞭を持って怒っているルイズが才人の前に立っているときに流れる歌詞は「君が突然現われた」というものである)。


 アニメのオープニングがどうあるべきなのかというのは難しい問題であり、別にどうあってもいいと思うのだが、歌詞の物語性と映像の物語性が二重にある場合、そこにひとつの統一性をもたらすのはなかなか大変なことだと思われる。もし統一性をもたらすことに成功すれば、そのオープニングは、かなりの効果を生むと思われるのだが、『ゼロの使い魔』の場合、少なくとも、上記のような分かりにくさがあるという点で、それほどの効果をもたらすには至っていないと言わざるをえない。