『オヨネコぶーにゃん』のエンディング曲

 アニメの主題歌は、ある時期まで、オープニング(OP)の曲とエンディング(ED)の曲との振り分けのようなものが明確にあったように思う。簡単に言ってしまえば、OPが明るい曲なのに対して、EDが暗い曲、OPがテンポの早い曲であるのに対して、EDがゆっくりとした叙情的な曲というような振り分けである。


 EDのそうした暗い曲の中でも特に印象に残っているものとして、僕は、『オヨネコぶーにゃん』の名前を上げたい。というよりも、『ぶーにゃん』のED曲ほど、聴いていて悲しくなってくる曲はないと言える。それは「ネコは言いたい」という題名の曲なのだが、その歌詞の内容があまりにも作品の内容と合致しすぎていて、むしろ、本編のストーリーでは提示されていないようなものをそこで提示しているという感じなのである。


 『ぶーにゃん』については、以前、少し書いたことがあったが、この作品は、簡単に言うと、いじめをネタにしたギャグアニメである。もちろん、見ているほうがそれほど不快にならないように、それなりに考慮されて作られている作品なわけだが、ED曲の内容は、そうした考慮を一瞬にして帳消しにする力強さを持っている。


 EDの曲の雰囲気は、端的に、「生きていかなきゃならないの」と「今日も涙をありがとう」という歌詞によって示されることだろう。「生きていかなきゃならないの」とは、つまり、そんなふうに毎日をつらい思いをして過ごしているとしても、生きていくためには、そうしたつらさを耐え忍ばなければならない、ということである。「今日も涙をありがとう」については、そんなふうにつらい生活を送ることで、日々、涙を流したとしても、それを嘆き悲しむのではなく、やはり、耐え忍んでいかなければならない、ということである。


 つまるところ、このED曲の内容は、日々のつらさを「つらい」とか「苦しい」とか言うことなく、完全に開き直って、自虐的に自分のことを描写している歌なのである。だから、曲調は少し明るいのだが、歌詞の内容が暗いので、全体としては、やはり、暗い曲だと言える。


 このED曲は、本編のギャグという雰囲気とはほど遠いものだと言える。そこにあるのはユーモアではなく、皮肉めいたブラックユーモアである。だから、この曲を聴いても笑うことができない。本編の作品を笑いながら見たあとに、この曲を聴かされるというのは、番組構成自体が皮肉な作りになっていると言える。少なくとも、僕は、このED曲のことを忘れることができないまま、現在にまで至っている。