街の持つ意味

 『Fate/stay night』のアニメについて少し。

 この作品のバトルロワイアル形式については、以前に少し書いたので、改めて書くことはしない。この作品を見ていて、少し興味深く思ったのは、そこでの街の描写、街が持つ意味とでもいうべき側面についてである。

 このことは、この作品の原作がゲームであることと関係あるかも知れないが、この作品では、街の中の一定の場所、ないしは、建物が重要な意味を持っている。つまり、重要な出会いや戦闘が行なわれるのは、ある固有の場所において、ということである。

 ここでの感覚は、端的に言って、「あの場所には何かがいる」というものだろう。つまり、場所が独特の意味をそこでもたされているわけである。

 この街で、人には知られることなく、何かが起こっている。こうした感覚は、『GANTZ』でも描かれていることであるが、『GANTZ』において、街が持つ意味とはどのようなものであるだろうか?

 『GANTZ』の舞台である東京。その独特の雰囲気とは、大衆がそこにいる、というものである。例えば、新宿の大虐殺のシーンにおいて、逃げ惑う人々とは、いったい、誰なのだろうか? それが誰かとは特定できないところは、宇宙人たちが非常に強い同胞意識を持っているのと対照的である。宇宙人たちは「われわれ」と「彼ら」をはっきりと分ける。しかし、新宿で殺された人と逃げ惑う人々とは同じ「われわれ」なのだろうか? 宇宙人の死体を前にしても奇妙に暢気でいる人々の描写を見ると、奥浩哉が描き出そうとしている都市の雰囲気が多少なりとも分かるような気がする。